「素敵な散歩」
麹町支部 竹内春美
ある小春日和の休日。暖かな陽気につられて久しぶりに家の近くを散歩しました。我が家は京王線のつつじヶ丘駅から歩いて5〜6分のところにありますが、まだ畑やぶどう畑の棚があちこちに残っています。東京都とはいえ無人の野菜スタンドもあるような田舎ですが、私はこんなのどかな風景が結構気に入っています。
ぶらぶらと仙川の方へ5分くらい歩くと実篤公園があり、ここで武者小路実篤が晩年の20年間(70歳から90歳まで)を過ごしました。今でも武蔵野の面影を残しており、約5000uの広さの豊かな樹林に囲まれた静かな公園です。実篤は子供の頃から水のある所に住みたいという希望があり、湧き水のある仙川に居を定めたということです。今でも湧き水を集めた小さな滝があり、上の池や下の池の周辺ではキャンバスを広げて絵を描いている人を何人も見かけました。凛として響いてくる湧き水の音や木々の間を縫うように通り抜ける風の声を聞きながら歩いていると、旧実篤邸が見えてきます。土、日は実篤邸が公開されているので、中に入って当時の調度品そのままの仕事部屋や応接間を見ていると、タイムスリップしてしまいます。ここは実篤が昭和51年4月に亡くなった後、遺族から多くの作品や美術品とともにこの邸宅も調布市へ寄贈されたということです。当時の実篤の相続税はいくらくらいだったのかなとか、措置法70条の地方公共団体への寄付を適用したのかななんて考えてしまうのは職業病ですね、まったく・・・・。折角タイムスリップして優雅な時間を過ごしていたのに現実に戻ってしまいました。
武者小路実篤は志賀直哉とともに活躍した作家ですが、私にはあの有名なかぼちゃの絵や素朴で味わい深い書の方が心に残っており、人生を語る哲学者という方がふさわしい気がします。
君は君 我は我也 されど仲よき
いいですね、私の好きな言葉です。こんな素敵な散歩が出来て武者小路実篤氏に感謝です。
上記作品は http://www.mushakoji.org/より |